研究概要 |
本研究では、卵子の成熟化機構におけるH1oo蛋白の役割を明らかにするために、H1ooとCSF (Cytostatic factor), MPF (Maturation promoting factor)との関連について検討を加えた。大腸菌発現ベクターにH1ooの翻訳領域をクローニングし、リコンビナント蛋白を作成する。作成されたH1oo蛋白は、C末端に追加されたヒスチジンのエピトープにより、ニッケルレジンカラムで精製し実験に使用した。リコンビナントH1ooを受精前後の卵子抽出物やMPF (Maturation Promoting Factor)の活性中心であるリコンビナントcdc2/cyclinBと放射性同位元素によってラベルしたATPと反応させることによって、H1ooが実際にリン酸化されるかどうか検討する。また、過排卵により回収されたマウス卵子及びマウス初期胚を使用し、抽出蛋白を抗H1oo抗体で免疫沈降することによって卵子成熟・初期発生の各時期でのH1oo蛋白を回収する。回収したH1oo蛋白をpolyacrylamideゲルにて泳動し、セルロース膜にブロッティングした後、抗H1oo蛋白抗体でのリン酸化の卵子成熟・初期発生における変化を検討した。その結果、卵子抽出物やリコンビナントcdc2/cyclinBによってH1fooがリン酸化されることが明らかとなった。また、GFP-H1oo,GFP-H1c恒常発現3T3細胞を作成し、核蛋白抽出キット(Pierce)を使用して、核蛋白を抽出し、抗体アレイを使用し、核蛋白をアレイに結合させ、さらに抗GFP抗体でアレイ上に残った蛋白と結合しているGFP-H1oo,GFP-H1c蛋白を検出した。実際に細胞周期関連蛋白や細胞死関連蛋白がH1fooと蛋白相互作用を有することが明らかとなり、H1fooが細胞周期における重要なレギュレーターであることが示唆された。
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