今回我々はマウス卵子特異的に発現するリンカーヒストンH1fooの機能解析を行うことを目的にモルフォリノを利用してH1fooの発現阻害を行った。BDF1マウスよりPMSG刺激後48時間にてGV卵を回収し、H1fooに対するモルフォリノをマイクロインジェクションした。マイクロインジェクション後時間を追って免疫染色およびウエスタンブロッティングにてH1foo蛋白量の変化を観察したところ逆相補配列をもつコントロールのモフォリノをインジェクションした卵にくらべてH1fooが減少していることがわかり、40時間以上たっと免疫染色およびウエスタンブロッティングにてH1fooは検出されなくなった。そこでモルフォリノによりH1fooをノックダウンした卵をin vitro maturationさせて第1極体の放出による成熟率を検討した。その結果、コントロールにくらべノックダウン卵では有為に成熟率が低い傾向が得られた。但し、成熟した卵を単為発生させた場合、前核形成率でみた発生率に関してコントロールとの間に差はみられなかった。また、リコンビナントH1fooをMPF(Maturation Promoting Factor)の活性中心であるリコンビナントcdc2/cyclinBと放射性同位元素によってラベルしたATPと反応させることによって、H1fooがin vitroでリン酸化されるかどうか検討した結果、H1fooがMPFによってリン酸化された。以上の結果よりH1fooが卵成熟、すなわち減数分裂の過程で機能していることが強く示唆された。
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