研究概要 |
本研究においては、子宮内膜症の進展に関与する遺伝子群および疼痛に深く関与する遺伝子群を探索するとともに、治療への一助とすることを目的として本研究を企画し,以下の点を明らかにした。 〔1〕子宮内膜症の進展に関与する遺伝子群の解析(月経モデルによる解析) 月経時における子宮内膜の変化が子宮内膜症の発症と関連しているとの予測よりin vitro月経モデルおよびGeneChipを用いた網羅的遺伝子解析を行った。ステロイド離脱群における発現増強遺伝子は13個、減弱遺伝子は32個であった。増強遺伝子には、月経関連遺伝子および子宮内膜症関連遺伝子として既に同定されているMCP-1やIL-8が含まれていた。一方、月経関連遺伝子としては未報告の遺伝子としてMMP-8やEST clone(EST-X:未知の遺伝子)が含まれていた。 〔2〕子宮内膜症の慢性化と疼痛発症に関与する遺伝子群の抽出 〔1〕の月経モデルにより検出されたMMP-8およびEST-Xの他に、病巣の進展と疼痛の発症に関わると予測した遺伝子群について検討した。MMP-8は子宮内膜症病巣に発現が認められたが、病巣の進展度とは明らかな相関は検出されなかった。一方、EST-Xは、子宮内膜症病巣と正所性子宮内膜の比較で、子宮内膜症病巣に発現を強く認めた。病巣の進展と疼痛に関与していると予測される遺伝子群では、cPGES、およびKinin-B1Rなどが、子宮内膜症病巣に発現が比較的強く認められた。 以上より、子宮内膜症の病巣においてMMP-8およびEST-Xが子宮内膜症の進展に関与している可能性が示唆された。また、子宮内膜症における疼痛発症に関しては、疼痛という主観的な要素があり評価が困難であるものの、今回、子宮内膜症病巣で検出された分子群(cPGES, Kinin BIR)などが、病巣の進展と疼痛発症に関して一定の役割を果たしている可能性が示された。
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