研究概要 |
1)マウス着床周辺期・妊娠期間中の子宮におけるスタスミンファミリー遺伝子の発現について検討した。マウスではスタスミンは脱落膜化過程で減少するが,一方,SCG10の発現は脱落膜化を起こした子宮で高進していること並びにスタスミンノックアウト(欠損)動物でも脱落膜化時にその発現が高進していることが判明した。RB3とSCLIP発現量はスタスミンやSCG10の発現量と比べると低く,脱落膜過程で低下傾向にあった。このように,マウスではSCG10と脱落膜化の関連性が示唆された。2)スタスミンとSCG10のダブル欠損マウスを作成するため,SCG10欠損マウスの作成に着手した。SCG10遺伝子の翻訳開始点を含むエクソン1をネオマイシン耐性遺伝子に置換したターゲッティングベクターを作成したが、相同組み換え体が得られなかったため,再度新たにエクソン2の一部をストップコドンに置き換えたターゲッティングベクターを作成した。3)リン酸化スタスミンはその構造上のregulatory domainに4つのセリンリン酸化部位を有している。リン酸化スタスミンを尿素・グリセロールゲル電気泳動法とリン酸化スタスミン抗体によるウェスタンブロット法により高感度に検出する実験系を確立した。4)培養ヒト子宮内膜細胞のin vitro脱落膜化モデルでのスタスミン発現の抑制と脱落膜形成との関係を検討した。内膜間質細胞の初代培養系では脱落膜化の進行過程でスタスミン蛋白質レベルが低下したが,樹立したヒト子宮内膜細胞株でも同様の結果を得た。スタスミン発現が低下する前段階のスタスミン発現をsiRNA処置により抑制すると脱落膜化マーカーであるプロラクチンとIGF-binding Protein 1の分泌が消失した。よって,スタスミンは脱落膜化過程で抑制的調節を受ける脱落膜化促進因子であることが示唆された。
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