研究概要 |
Vascular endotherial growth factor(VEGF)は血管内皮細胞のみならず絨毛細胞の増殖因子である。soluble VEGFRI(sVEGFRI)はVEGFの可溶性のreceptorであるが流血中に存在しVEGFの作用を調節している。sVEGFRIはVEGFの作用を抑制するよう作用している。絨毛癌細胞培養系を用いて妊娠高血圧症候群血清のVEGFおよびsVEGFRI産生に対する影響を検討した。絨毛癌細胞培養細胞株(JEG-3)を24穴プレートで培養しコンフレントの状態で、各血清を10%の濃度で添加し、24時間後の培養上清を採取freeVEGF,sVEGFRI濃度をELISA法にて、絨毛癌細胞の生存率をXTT法にて測定した。培養上清中のfreeVEGF濃度は正常妊娠に比し妊娠高血圧症候群で有意な低値を認めた。しかし、sVEGFR1の増加濃度は正常妊娠に比較し妊娠高血圧症候群で有意に高値を示した。絨毛癌細胞の生存率は正常妊娠と妊娠高血圧症候群で有意な差を認めなかった。これらのことより絨毛細胞によるVEGF作用制御として、妊娠高血圧症候群血清はVEGFの作用を発現しにくくし、妊娠高血圧症候群の胎盤形成に抑制的作用をもつ事が判明した。胎盤局所におけるVEGF,PLGF,Flt-1の動態を検討するためこれらの胎盤局所におけるmRNA発現量をABI PRISM 7700, TagMan Gold RT PCRreagents, TagManプローブキットを用い、定量的PCR法にて検討した。妊娠高血圧患者胎盤ではVEGF、Flt-1の発現亢進が認められ、PLGFのわずかな増加は週数の違いによる変化が影響していると考えた。流血中のVEGF,sFlt-1の変動には胎盤そのもの関与を考慮に入れる必要があると考えた。
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