研究課題
基盤研究(C)
喉頭癌63例、上咽頭癌36例、中咽頭癌34例、下咽頭癌45例においてホルマリン固定組織を用いて、HLA class I抗原と抗原提示に関与する分子の発現を免疫染色にて検討した。HLA class I抗原はそれぞれの病変部において約80%以上の症例において低下していた。また、喉頭癌、上咽頭癌においてLMP2、TAP1、tapasinは約70%の症例で低下していた。HLA class I抗原の発現低下は喉頭癌、上咽頭癌の不良な臨床経過と関連していたが、中咽頭、下咽頭癌において関連はみられなかった。頭頸部癌細胞株におけるHLA class I抗原および抗原提示に関与する分子の発現に対するIFN-γの効果についてフローサイトメーターを用いて解析した。HLA class I抗原の発現はIFN-γの存在下ではHLA class I抗原の発現が上昇し、LMP2、TAP1、tapasinの蛋白の発現も上昇した。また、IFN-γの存在下ではLMP2、LMP7、TAP1とHLA class I抗原の発現に相関が認められた。CTLとの反応性に関しては、LMP2、TAP1、TAP2、tapasinの発現が低い細胞株はCTLに認識されにくく、それはIFN-γの存在もしくはTAP1の遺伝子導入による高発現によって回復した。これらの結果から、HLA class I抗原や抗原提示に関与する分子の発現低下は頭頸部癌における免疫回避機構になっており、抗原提示に関与する分子の発現を遺伝子導入による発現増強やIFN-γを用いることによってHLA class I抗原の発現を上昇もしくはCTLによる認識を増強させることが可能で、その結果、免疫系から癌細胞は認識、排除されやすくなる可能性があると考えられた。
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