本年度は、肉眼解剖により頭蓋底下面への様々なアプローチ法の特徴と到達可能範囲を検討し、術式とその適応を明確にした。 1.Le Fort I骨切り術は単独では展開範囲が上咽頭および斜台の一部に限られるが、この術式に上顎正中断さらに下顎正中断の操作を順次追加していくことで、その到達範囲が広くなる。それぞれの段階での到達範囲を解剖学的に明らかにし、術式選択の基準を示した。 2.Facial dismasking法は顔面に大きな皮膚切開を加えないで顔面上方3分の2を展開する方法であるが、大きく展開するほど神経損傷は著しくなる。そこで解剖学的に検討し展開の程度からType1-3に分類した。それぞれのTypeにおける展開範囲を示し、最小限の副損傷で目的とする術野を得るための適切な選択基準を示した。 3.眼窩頬骨骨切り法は従来頭蓋内の病変に対するアプローチ法として脳神経外科領域で用いられてきたが、頭蓋底下面へのアプローチ法としても有用であることが臨床経験から明らかになってきた。しかし骨切りの範囲と展開できる領域との関係は明らかでなかった。今回の解剖学的検討により、眼窩頬骨骨切り法と頬骨骨切り法の展開範囲を解剖学的に検討し、それぞれの術式の適応を明確にした。 4.Maxillary swing approachについては、原法では手術侵襲も大きく出血量も多いといった問題点があった。解剖学的に検討し後壁を一部残す変法を考案した。これにより低侵襲な手術が可能となった。
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