メニエール病の発祥には生活環境における外的ストレスによるリズム変調が関与し、そのリズム変調による内耳液制御の破綻が内リンパ水腫を形成および促進させる可能性が考えられる。まず、我々は、メニエール病症例において、日内リズムの最も有用な表現型であるメラトニンの目内リズムを検討し、メニエール病症例群では健常成人群に比して、メラトニン産生低下と日内リズムの異常があることを報告した。また、内リンパ水腫制御に関係する水チャンネルのレギュレーションを制御していると考えられているバゾプレッシン(抗利尿ホルモン:ADH)の血清濃度をメニエール病群と他のめまい群で比較したところ、有意に前者で血清ADHは高い結果となり、とくに末梢性めまい群ではめまい発作期と非発作期では血清ADHに差がないにもかかわらず、メニエール病群では有意に発作期に高かった。メニエール病の発作期群では同時に検討したストレススコアーも有意に高かった。そこで、マウスを用いて、日内リズムを破綻させるために飼育条件を終日完全暗所、終日完全明所、12時間ずつの明所暗所とした場合で内リンパ水腫が形成されるかどうか検討した。同時に血中メラトニン濃度を測定し、1〜2ヶ月飼育の後、内耳を採取し、ホモジネートした成分内のメラトニン濃度も測定した。また現時点では内リンパ水腫形成に有意な結果とはなっていないが、現在、アルドステロン(Na-K-ATPaseを介して、内耳液制御を行っている報告がある)の連日投与を併用することで内リンパ水腫形成が促進される傾向にあり、更なる実験を継続している。
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