研究概要 |
アレルギー性鼻炎などのアレルギー病態において、上皮細胞の果たす役割の大きさが最近認識されるようになってきた。今回は、アレルギー病態にかかわるメディエーターが、上皮細胞内でいかなる情報伝達機構を介して上皮細胞の機能変化をもたらしているかを明らかにした。 1.ロイコトリエンがムチン遺伝子MUC2の転写活性を亢進する細胞内メカニズム ロイコトリンが粘液分泌に関与することは報告されていたが、粘液のコア蛋白であるムチン遺伝子の転写を左右するか否かについては明らかにされてなかった。今回、MUC2を発現することが知られているHM3を用いて転写活性亢進に関与する機序をレポータージーンアッセイにて検討した。その結果、leukotriene D4(LTD4)によるMUC2遺伝子転写活性亢進には、CysLT1R依存性に転写因子のNF-κBの活性化が関与していることが明らかになった。また、CysLT1Rの下流にはG-protein,PKC,MEK,ERKなどの分子の関与が推定された。 2.トロンビンがヒト上皮細胞の透過性を亢進させる機序 凝固に関与するトロンビンは近年炎症や免疫反応にかかわることが報告されているが、血管内皮の透過性を亢進させるトロンビンが、いかなる機序で上皮細胞の透過性を亢進させるかを検討した。トロンビンの存在下でCalu-3細胞を培養すると、マニトールやアルブミンに対する透過性が亢進し、上皮を介する電気抵抗が低下した。細胞骨格蛋白のアクチンの形態変化を観察すると、トロンビンによりアクチンストレスファイバーが出現し、細胞間には間隙が形成された。また、PAR-1アゴニストによってもトロンビンと同様の変化がみられたことより、トロンビンはPAR-1を介して、細胞骨格蛋白の収縮をきたし、細胞間の結合をゆるくすることにより上皮の透過性を亢進させることが明らかになった。
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