研究課題/領域番号 |
16591706
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
喜多 知子 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (20362519)
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研究分担者 |
中川 隆之 京都大学, 医学研究科, 助手 (50335270)
藤野 清大 京都大学, 医学研究科, 助手 (50359832)
平海 晴一 京都大学, 医学研究科, 助手 (10374167)
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キーワード | 蝸牛有毛細胞 / 神経細胞 / 器官培養 / 神経接合 / 神経栄養因子 / 胚性幹細胞 / 細胞移植 / 遺伝子導入 |
研究概要 |
蝸牛有毛細胞と神経細胞との聴覚機能再生を目指し、本年度では、昨年度の結果を受けて、in vitro器官培養とin vivo細胞移植実験における、両者の接合様式について以下の通り検討を進めた。 ストローマ細胞により神経方向に誘導した胚性幹細胞(神経誘導ES細胞)を用い、生後3日齢のマウス蝸牛との共培養で接合様式を検討した。昨年度確立した「切除法」により、有毛細胞を傷害せずに蝸牛神経を切り離し、神経誘導ES細胞と、接触を伴うインサート法で数日間共培養した。得られた標本を、Caイメージングによる電気生理学的評価および電顕観察にて解析した結果、蝸牛有毛細胞内Caイオンの変化、並びにシナプス形成が確認された。現在、例数を追加し確認中である。併せて、前庭有毛細胞でも同様の実験を行った。神経の切除は既報のパパイン処理を用い、接触を伴うインサート法で神経誘導ES細胞と共培養した。その結果、接合部位のsynaptophysin免疫染色により、シナプス形成が見られた。 次に、遺伝子導入実験の第一段階として、brain-derived neurotrophic factor(BDNF)を恒常発現させたNIH3T3細胞を確立した。BDNFは蝸牛神経細胞の維持に有効な因子であることから、今後この手法を応用し、神経ガイド因子との共発現による検討を進める。 さらにin vivo細胞移植実験も行った。カナマイシン+エタクリン酸併用投与により難聴(二次的な蝸牛神経細胞死)を起こしたモルモットの内耳蝸牛軸に、神経誘導ES細胞を移植し、EABRにて機能評価を行った。結果、移植した神経誘導ES細胞の中枢へのシナプス伸張が認められ、EABRの改善が確認された。この機能改善は有意であるもののわずかであった事から、今後、上記の遺伝子導入細胞を用いて、臨床応用が期待できる程のより大きな改善を目指したい。
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