研究概要 |
周波数特性の優れた定温型熱線流量計は,これまで音声の研究には呼気流量の測定など広く用いられてきた.理想的には発声中に起こる声門部での気流の断続状態を直接測定し声門波形を測定することが良いが,現実的には困難であり,マウスピースを口にくわえてその中を通過する呼気流を測定することで代用されてきた.我々は超小型プローブを作成,改良を重ね,生検鉗子用ワイヤーの先端に5μのタングステン線を用いた熱線プローブを装着した熱線流速計を開発した.その結果喉頭ファイバーのチャンネル内を通すことが可能となり,声門直上へプローブを誘導することが容易になった.また,被検者の嚥下時などファイバー内に熱線プローブを退避することで耐久性も向上した.呼気流速は喉頭蓋の上方と比較して声門に近いほど高速であった.得られた流速の変化をフーリエ変換し周波数分布を求めたところ8000Hz付近にピークがある高周波成分を検出され,この高周波成分は母音を変えても影響を受けなかった.声帯振動の観察についてはこれまで硬性鏡に装着した高速度カメラが用いられてきたため声門直上に近づけることは困難であった.今回紫外域〜可視光域に高い感度を持つイメージインテンシファイア対応高速度カメラを用いることで,喉頭ファイバーに接続し声帯運動を撮像することに成功した.喉頭ファイバースコープと超小型熱線プローブを声帯直上に留置することによって呼気流速変動に同期させて声帯振動を実際に観測した.
|