我々の従来の研究で、モルモット内リンパ嚢中間部の単離上皮細胞において、数種類のイオンチャネルを同定してきた。今回は、なるべくin vivoに近い条件で内リンパ嚢上皮細胞のイオン輸送システムを調べるために、シート状に単離したモルモット内リンパ嚢中間部組織を使用して研究を進めている。現在、シート状に単離した組織において、patch clamp法のsingle-channel recordingにて、apical側のイオンチャネルを調べている。カリウム電流と考えられる電流を比較的多く記録できているが、単離上皮細胞のwhole-cell recordingで観察された内向きナトリウム電流は、今のところ観察されていない。カリウムチャネル阻害剤で、カリウム電流を抑制した状態で観察されるかどうかを検討中である。また、従来の我々の研究で内リンパ嚢上皮細胞でのアルドステロンレセプターの存在が示されており、アルドステロンは上皮性ナトリウムチャネルの数を増加させることが知られているので、今後アルドステロン作用下でのナトリウム電流を調べていく予定である。 メニエール病症例において、文書によるインフォームド・コンセントに基づき、上皮細胞を含んだ内リンパ嚢組織を集めているところである。今後の動物実験においてイオン輸送の修飾因子が明らかにできた段階で、メニエール病症例の内リンパ嚢ではイオンチャネルなどのイオン輸送システムとその修飾因子がどのようになっているかを検討していく予定である。
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