研究課題/領域番号 |
16591713
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
兵頭 政光 愛媛大学, 医学部, 助教授 (00181123)
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研究分担者 |
脇坂 浩之 愛媛大学, 医学部附属病院, 助手 (30304611)
本吉 和美 愛媛大学, 医学部, 助手 (70322279)
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キーワード | 嚥下障害 / 加齢 / 嚥下造影検査 / 咽頭クリアランス / 咽頭移動時間 / 喉頭挙上遅延時間 / 咽頭流入 |
研究概要 |
高齢者においては脳血管障害や神経・筋疾患などによる嚥下障害が生命予後に大きくかかわる。このような高齢者の嚥下障害に対し的確な機能評価と治療を行うためには、加齢に伴う嚥下機能の生理的変化を予め把握しておくことが不可欠である。本年度は、嚥下造影検査(Videofluorography、以下VF検査)により、嚥下機能の加齢変化について検討した。 方法:咽喉頭異常感を訴えて当科を受診した患者のうち、VF検査を施行し、かつ口腔・咽頭・喉頭の器質的異常や嚥下機能に影響を及ぼしうる脳血管障害や神経筋疾患などの既往のない96例を対象とした。96例をA群(49歳以下、n=27)、B群(50〜69歳、n=43)、C群(70歳以上、n=26)に分けて、VF検査の録画所見より造影剤の口腔移動時間、咽頭移動時間、喉頭挙上遅延時間、咽頭クリアランスなどを検討した。 結果:口腔移動時間はA群が0.39秒、B群が0.41秒、C群が0.42秒で有意差を認めなかった。咽頭移動時間はA群が0.17秒、B群が0.22秒、C群が0.24秒、喉頭挙上遅延時間はA群が0.23秒、B群が0.27秒、C群が0.28秒でいずれも加齢とともに延長した。咽頭クリアランスは、造影剤が咽頭粘膜全体に残留するか梨状陥凹などに貯留するクリアランス不良例の割合が、A群で4例(15%)、B群で3例(7%)、C群で7例(26%)であり、C群でのクリアランス不良例が増加した。その他の所見として、早期咽頭流入を認めた例がA群で3例(11%)、B群で9例(21%)、C群で(27%)と加齢に伴って増加した。 考察:以上の結果より、加齢に伴い嚥下機能が悪化することが明らかにされ、特に咽頭期が障害を受けやすいことが推測された。その機序としては喉頭の下垂などの解剖学的変化、知覚神経系の機能低下、および嚥下関与筋の筋収縮力・収縮速度の低下などが考えられる。
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