脳血管障害や脳腫瘍、神経筋疾患、頭頸部癌術後、食道癌や心臓大血管手術の術後の気道閉塞や呼吸機能障害に対して気管切開が行われている例の嚥下機能をビデオ透視と嚥下圧測定で評価した。 ビデオ透視による解析では、喉頭の挙上閉鎖に障害があり誤嚥が見られる場合と、クリアランス障害のため残留した造影剤が喉頭・気管へ流入する場合が観察された。原因としては前者の場合、気管切開創の瘢痕とカニューレによる喉頭の挙上障害が考えられた。後者の場合には、カニューレのカフによる食道の圧迫と声門下圧の低下が考えられた。通常の嚥下では嚥下咽頭期に声門が閉じ声門下圧が高まり、声門下への食物の流入を阻止しているが、気管切開が行われていると声門下圧が上昇しなくなり、咽頭残留物が下気道へ流入しやすくなることが想定された。 嚥下圧の測定では、もともとの疾患のために嚥下時の軟口蓋部圧、中咽頭部圧、下咽頭部圧が低下している例が多かったが、咽頭圧の低下のため咽頭クリアランスが悪い例では喉頭・気管へ流入する傾向がみられた。食道入口部の圧低下は正常にみられる例が多くカニューレのカフによる食道圧迫や輪状咽頭筋の機能障害による影響は少ないと考えられた。 今後、嚥下圧測定と同時に、気管切開カニューレより挿入した圧プローベにて声門下圧を測定することにより、気管切開例での声門下圧の変化および気管切開を閉鎖したときの声門下圧の変化と嚥下機能に対する効果を検討する予定である。
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