研究概要 |
頭頸部扁平上皮癌の個々の細胞の性格を明らかにするため当科で樹立化された17種の培養細胞のEGFR, VEGFR, PDGFRなどの発現をRT-PCR法及びウェスタンブロット法で検討するとともに、その阻害剤の効果をみた。EGFR蛋白の発現は、強弱はあるものの17種全ての培養細胞で認められた。しかしEGFRの発現とEGFR-TKI処理でのIC_<50>は相関しなかった。また、EGFR発現の強いKB細胞をヌードマウスに移植し、EGFR-TKIでの治療実験を行ったが抗腫瘍性は低く、現在EGFRのmutationについて検討中である。また増殖がEGFに依存する細胞ではEGFRのphosphprylationがみられ、増殖シグナル伝達系ではMAPKが主たる伝達系で、次いでAktであり、STAT3は増殖シグナルとしては弱い傾向が観察された。またEGFR-TKI処理による抗腫瘍性の機序はP27を介さないことも判明した。一方、VEGFR, PDGFRの発現をRT-PCR法で検討したところ、PDGFRは全ての細胞で発現がみられた。しかしその抗腫瘍性の機序にPDGFRのc-kit阻害作用を持つimatinib処理を8種類の細胞を用いて行ったが(MTT法)、2つの培養細胞で軽度の増殖抑制が認められるにとどまった。VEGFR発現に関しては17種のうち4種のみ発現のみられたFlt-1(VEGFR-1)を除いて、KDR(VEGFR-2)、Flt-4(VEGFR-3)は17種全ての細胞に発現が観察された。さらに、VEGFR-1,2,3の阻害剤を用いてIC_<50>を検索し、同じ17種の細胞のEGFR阻害剤のIC_<50>を比較した。その結果、両IC_<50>間にR=0.73と高い相関性を認めた。これらの結果をもとに、現在VEGFR-TKIとEGFR-TKI併用の抗腫瘍性の増強作用、また化学療法剤との相乗作用について検討中である。
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