研究概要 |
われわれはコネキシン(Cx)突然変異による難聴発症にグルコース細胞間輸送の障害が関与するという仮説を立て、これを検証する第一段階として蝸牛におけるグルコース輸送機構を明かにしようと試みた。 ラット蝸牛におけるグルコーストランスポーター1(GLUT1)とギャップ結合蛋白質Cx26、Cx43の局在を、免疫組織化学と共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて検討した。また蛍光グルコース誘導体[6-(N-(7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol-4-yl) amino)-6-deoxy-glucose (6-NBDG)]を血中に投与し、蝸牛におけるグルコース輸送を可視化した。さらにCx26-EGFPを発現させたHela細胞集団の中の単一の細胞に6-NBDGをマイクロインジェクトし、細胞間のグルコース輸送を検討した。 GLUT1は、蝸牛管内の血管壁、血管条の基底細胞、及びラセン縁の前庭階に近い部位に強く発現していた。Cx26は血管条の基底細胞と中間細胞及びラセン靭帯のfibrocyteに広く局在していた。血中に投与された6-NBDGは、速やかに血管条及びラセン靭帯全体に輸送された。Cx26-EGFPによるギャップ結合で結合しているHela細胞集団で、単一細胞にマイクロインジェクトされた6-NBDGは周辺細胞に輸送された。ギャップ結合阻害剤であるheptanolによって、血中に投与された6-NBDGのラセン靭帯への輸送、及びCx26-EGFP発現Hela細胞間の6-NBDG輸送が阻害された。 以上よりギャップ結合が蝸牛内のグルコースの細胞間輸送に重要な役割を果たしていると考えられた。
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