被検者を着座させ、垂直頭位で水平回転刺激を負荷することで水平半規管を興奮刺激し、頭を60度後屈さらに左・右に各々45度回旋させた頭位で水平回転刺激を負荷することで垂直半規管を興奮して、半規管ごとの回転中・後のSVVとベクションの発現を検討した。SVVは垂線に対する自覚的な垂直位を測定し、vection(ベクション)はその方向性を測定した。同時に、前庭眼反射(VOR)を赤外線CCDカメラで観察、記録し、眼球運動解析用PCにて分析した。 後半規管が自覚的視性垂直位(SVV)に影響をおよぼすことが判明し、興奮性反応を呈する後半規管と反対側へSVVが偏倚することが証明された。後半規管型・良性発作性頭位眩暈症では、頭位性めまい時に患側へ向くroll vectionが観察された。このSVVの偏倚は患側後半規管の興奮性反応により眼球が冠状面(roll plane)で患側耳と逆方向へ偏位した結果起ったものと考えられ、roll vectionはSVVに対する代償反応と考えられた。空間識の指標であるSVVやベクションの発現に垂直半規管が関係していることが強く示唆された。 垂直半規管の興奮性ならびに抑制性反応時の脳内神経活動を近赤外線脳血流量測定装置(光トポグラフィー)で測定し、この際に生じる「めまい感」を検討した。垂直半規管と同側の頭頂側頭部の皮質血流量が顕著に変化し、興奮時には増加、抑制時には減少する傾向にありました。めまい感は皮質血流量の左右差が大きいほど強い傾向にあった。垂直半規管が皮質レベルでめまい感の発現に深く関わる可能性が示唆された。vectionの発現に垂直半規管が関係していることが推察される(飯田。2004;Equilibrium Res.)。
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