喉頭上皮における特異AR関与の有無を確認する目的で以下の実験系を試みた。 AR蛋白の代謝酵素とされるカスパーゼ3の発現があるとの報告があり、当該喉頭癌細胞について確認したところこの酵素転写活性は確認されずAR蛋白翻訳後のこの蛋白の活性化消失でない。 またAR蛋白活性の存在を仮定した場合には、その共役因子の発現は必須であることからCBP、SRC、TIF2について検討した。その結果TIF2の転写が確認されずにAR蛋白作用に必要なP-160の関与を否定しうる結果となった。 さらに喉頭上皮における特殊性として前立腺での活性型であるdihydrotestosteroneには代謝されずTestosteronはそのままのかたちで、またEstrogenも他に代謝されること無くその標的細胞に作用する。Testosteron、Estrogenの受容体mRNAへの転写活性はあり、その前者に対するAR転写は細胞死現象誘導には必須である。しかしながらその後の翻訳はなく、すなわち特異的受容体となる蛋白発現を必要としないことが証明された。 喉頭癌のT誘導細胞死には明らかに古典的受容体経路は関与しない喉頭臓器特有の細胞内シグナル伝達系を介することを意味する。 また一方で喉頭癌発生にHPV感染の関与を示す臨床報告があり、当該研究の喉頭癌細胞を確認したところ、HPV-18のE6及びE7の転写活性の存在を示した。このことはこのウイルスのE6蛋白はP53蛋白に、E7蛋白はRB蛋白に関与していることを意味する。喉頭癌細胞におけるウイルスの活動は、細胞増殖等の生理活性への干渉を無視することは出来ない。P53の転写活性はあるがRbの蛋白発現はなく、男性ホルモンの影響下で細胞内P53蛋白は対象に比し約12倍上昇しており、男性ホルモン感受性に対する喉頭癌細胞の細胞死現象にP53蛋白が強く関与していることが証明された。以上
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