研究概要 |
喉頭は、発声を一つの機能とする器官であり、この組織を構成する上皮細胞は性ステロイドに対し感受性を有する。このことは音声の男女差に影響していることを意味し、また一方喉頭における新生物発生頻度は男性に多く、この組織における内分泌感受性という観点からの研究の必要性が存在する。性ステロイドによるこれら構成細胞内における作用機構の解明は、細胞活性の制御する上で重要な点である。このことを研究対象とし細胞モデルとして培養喉頭癌細胞を使用し、各種ステロイドに関して感受性実験の結果、胞喉頭上皮細胞が性ステロイド感受性の存在があり、性ステロイドに依存し細胞増殖抑制および細胞死が誘導されることが明らかとなった。なお、その細胞死の際において性ステロイドに対する特異受容体蛋白の発現することは無い(翻訳の不存在)。しかし、男性ホルモン受容体(AR)の翻訳がありそのRNAの選択的阻害により細胞増殖が促進する現象は存在する(転写の存在)。この転写の際、AR遺伝子発現の共役因子であるCBP、SRC、TIF2について検討し、その結果TIF2の転写が確認されずにAR蛋白作用に必要となるP-160の関与を否定しうる結果となった(細胞内シグナルの一部欠転写欠如)。また性ステロイドによる喉頭癌細胞死誘導の際、特異的に上昇する遺伝子発現を確認するため人遺伝子発現に関与する。更にこのことに関しマイクロアレー法により検討したが、ARに関与すると考えられる遺伝子の転写は一切発現していない事が確認された。また、RNA調節に係る段階によるこの細胞死誘導への関与を調べるべくiRNA発現に関してマイクロアレー法を用いて検討した。その結果has_miR_27a、has_miR_21、has_miR_23a、has_miR_16、has_miR_30c、has_miR_30a_5 has_miR_30d,has_miR_19b、has_miR_30e_5p、ambi_miR_7086、has_miR_17_5p等が性ステロイドによる喉頭がん細胞死誘導の際に有意に細胞内に上昇するiRNA群であることが確認された。しかし、そのAR遺伝子そのものまたは共役遺伝子に又は関係すると考えられる遺伝子等と塩基配列において相補的なものはまったく確認されなかった。そこで本研究の対象とする細胞がHPV感染細胞であり、HPV遺伝子が細胞増殖のサイクルに関与していることは確認されており、喉頭癌症例の数パーセントでその感染症例が示されており、そのウイルス存在又はその活性を含めウイルスの発現との性ステロイド関連遺伝子のiRNAとの相互調節も含め検討が必要であり、今後このことを含め更に研究する必要性があると考える。 以上
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