中耳手術の際に採取したヒト中耳粘膜(主に乳突蜂巣の粘膜)を用いて細胞培養を試みた。抗生物質および抗菌剤添加のMEM培養液に採取した粘膜を入れ、Proteaseとともに3〜8時間ロッキングしながら室温にてincubate、化学的に剥離した細胞およびメスにて骨壁より鋭的に剥離した粘膜細胞を、コラーゲンコートした細胞培養皿で一次培養した(Bronchial epithelial growth medium(BEGM)使用)。2〜4×10^6個/35mm dishに蒔き、2日おきにmediumを交換した。7〜14日間の培養でconfluentになるか否かを倒立式顕微鏡下に観察。中耳粘膜は、7日まで増殖した。次いで、BEGMにて培養増殖した細胞をCD31(Endothelial cell)、Vimentin、Cytokeratin Clone MNF116、Cytokeratin HMW Clone;34βE12をターゲットとした抗体を用いて免疫染色を行い、ABC法にてDABで発色させた。その結果、培養細胞はどの抗体にも染色されなかった。この原因として、培養過程において間質由来の細胞、たとえばfibroblastなどが増生してきた可能性が高いと考える。臨床応用を見据えた人工中耳粘膜作製として、今後は細胞培養と平行して採取粘膜を直接培養液内で培養する器官培養も試みる予定である。また培養条件の設定も重要な課題と考えられる。今回は無血清培地での培養を試みたが、まずは血清を含む培地での培養を試み、種々の最適な条件設定を行う予定である。
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