研究概要 |
結膜肥満細胞のsignal経路の詳細な解析は新規治療標的の探索に不可欠であるが、多量の成熟肥満細胞を必要とする。しかしながら結膜由来の肥満細胞を用いる場合、その収量の少なさは解析の支障となる。そこで前年度の純化方法をさらにrefineし、短期間で高収量の肥満細胞の分離法の開発をまず試みた。これまでの我々のデータにより、サイトカインに対する反応性、肥満細胞特異的プロテアーゼprofile,及び抗原に対する反応性から、皮膚由来の肥満細胞は結膜由来の肥満細胞とほぼ同様な性質を示すことが判明したため、結膜からの培養系のrefinementに加え、皮膚からの大量培養系の確立に着手した。具体的には、まず酵素消化後の比重による分離の後、肥満細胞と分別するためのMacrophage,リンパ系細胞のそれぞれの各種分化マーカーを用いてFACSによる詳細な解析を行い、sorting後にeffector機能の評価を行った。その結果、negative selection/positive selectionを併用した方法により、脱顆粒やその成熟化など肥満細胞の特異的機能に影響をきたさない大量分離培養系を確立した。また、これらのモデル細胞は、肥満細胞欠損マウスに結膜下注射すると成熟型の肥満細胞を結膜に賦与することができ、結膜浮腫や充血など抗原特異的な反応を惹起することができた。さらにその肥満細胞特異的プロテアーゼの発現プロファイルを検討すると野生型とほぼ同様な発現パターンを示していることが判明し、生理的にも妥当な細胞であることを確認した。これらの細胞を用いて前年度までに発現することをみいだした肥満細胞の成熟マーカー群である、CCR3,CXCR3,CCR5,CCR2などのケモカインレセプターとFcεRIの下流シグナルとのクロストークについて解析をすすめてきている。さらに、この結合組織型肥満細胞の刺激により産生される炎症性サイトカイン群をスクリーニングした結果、これらの肥満細胞はIL-2,IL-4,IL-10などを分泌し、これらの誘導にはNF-κbを介する経路が一部関与していることが判明してきた。
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