研究概要 |
網膜生存分化因子に関連するタンパクについてスクリーニングをおこなうことを目的として、家鶏胚の網膜組織のプロテオミクス解析を行った。同定されたタンパク群は多種多様の機能を有するタンパクであった。その中でも特に発生分化に関与するファミリーの一つであるWnt14に着目した。Wnt14は網膜の中でも網膜神経節細胞に強く発現し、Wnt14を強制発現させたR28細胞では、グルタミン酸神経毒性によって誘導される細胞死に対して抵抗性を有することが判明した。さらに、Wnt14の神経保護作用はCaspase-3を介するアポトーシス・シグナル経路を抑制した。 また、我々が以前に行った、緑内障モデルマウスの網膜をサンプルとして用いたプロテオミクスの結果から、緑内障性網膜神経神経障害に関連するタンパクが明らかになってきた。そのうちの1つであるPDGFR-alphaはマウスの網膜神経節細胞に局在することが確認され、PDGF-AAをラット継代型網膜神経節細胞(RGC-5)に作用させてみると、グルタミン酸誘導性網膜神経節細胞死が抑制されることが判明した。以上の結果より、PDGFR-alphaを介するシグナル系は、緑内障の主病態とされるグルタミン酸誘導性網膜神経節細胞死を抑制する機能を有し、緑内障による網膜障害に対して、神経保護効果を期待される系であることが、明らかになった。 さらに、緑内障の発症の遺伝学的背景を検索する目的にて、緑内障患者の遺伝子を検索した結果、TNF-alpha, Angiotensin-II receptor, Endothelin A receptorなどの遺伝子多型との関連性が見出された。しかし、中枢性神経変性疾患であるAlzheimer病の遺伝子多型との関連性はないことが明らかになった。
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