研究概要 |
本研究は、角膜の無血管維持機構の解明を目的とし、そのアプローチとして(1)分化機能を維持したhTERT導入不死化角結膜上皮細胞を作成し、重層化した培養上皮モデルを確立すること(平成16年度)、さらに(2)角膜無血管維持機構の関連を関連遺伝子を選択的に阻害した形質転換細胞株を樹立し解析すること、(3)遺伝子発現阻害不死化細胞株を眼表面の異なる環境下に移植し、角膜での血管新生抑制効果の有無を検証を行なう。 1.hTERT不死化角膜および結膜上皮の樹立と培養系の確立 hTERTと細胞周期関連因子であるCDK4の変異体であるp16 insenstive CDK4およびp53の3つの因子を同時に制御するhTERT導入細胞株の培養系を確立した。この不死化細胞をサブコンフルエント後に低カルシウム濃度培養系におくことで、分化誘導させ重層化させることが可能であった。またコラーゲンゲルと3T3線維芽細胞との共培養系においては極めて生体角膜上皮に近い分化組織構造を再生できた。 2.hTERT不死化細胞を用いた分化細胞モデルでの遺伝子解析 この高度に分化したin vitro培養モデルと角膜上皮のprimary cultureとの遺伝子比較を行なった。両者から抽出したmRNAを約200遺伝子に関してiALFP法による解析比較を実施した。両者間の遺伝子クラスター解析では類似した遺伝子発現パターンをとることが判明し、hTERT不死化細胞においても細胞特徴が保存されていることが示唆された。 3.培養結膜上皮の作成と遺伝子解析比較 hTERT導入不死化角結膜上皮細胞の遺伝子特性を解析する比較モデルとして羊膜上培養結膜上皮シートを作成した。家兎を用いたゼノ移植モデルにおいて結膜上皮シートを生着させることに成功した。さらに組織解析では上皮分化指標となるムチン遺伝子MUC4,MUC5ACはin vitroの状態ではともに発現されないものの、眼表面に移植した後にはMUC4遺伝子やkeratin 3等の分化マーカーが発現される細胞特性を確認した。
|