研究概要 |
眼表面を構成する角結膜上皮は細胞分化や血管新生など組織構築が大きく異なる。組織構築の破壊や細胞疲弊が生じる眼表面疾患では、細胞移植を主体とした眼表面再建が必須となる。新しい眼表面再建治療の開発には恒常状態での上皮特性、細胞分化、血管新生抑制などのメカニズムを解明していく必要がある。我々はiAFLP法を用いて36の血管新生関連因子の角膜上皮、輪部上皮、結膜上皮の発現差異について遺伝子発現を検討し、血管新生抑制因子トロンボスポンジン1(TSP1)mRNAは角膜、輪部両上皮基底細胞に認められ、その発現量は結膜上皮に比して有意に亢進していることを明らかにした。TSP1蛋白は角膜上皮基底部に発現を認め、輪部上皮においても上皮下組織にわずかな発現を認めたが、結膜上皮は発現しない。免疫電顕法では角膜、輪部両上皮基底細胞内基底側、角膜上皮下ボーマン膜、輪部上皮下組織中にその発現を認め、基底細胞から分泌されたTSP1がボーマン膜に蓄積することで、角膜無血管組織を構築していることが推測された。また再生医療を応用した眼表面再建術として培養粘膜上皮移植の作成法と移植術を確立し、有効性を報告した。特に眼組織以を用いた自家代用上皮として口腔粘膜上皮が有用であるが、本来の角膜上皮と比較し血管新生を誘導する傾向がみられる。両シート間での血管新生因子の比較では培養角膜上皮シートではTSP1を主体にPEDF, endostatinの有意な発現が認められ、眼表面再建後の無血管角膜の維持に関与していることを明らかにした。本研究成果は臨床応用されている培養粘膜上皮シート移植による眼表面再建術のさらなる発展と代用角膜上皮シート移植の開発に寄与することが期待できる。
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