研究概要 |
当該研究の目的は経瞳孔温熱療法(TTT)により発現される未知の新生血管抑制作用のある遺伝子を同定し、そのメカニズムを解明することにある。そのため、TTTをラットに施行し、網脈絡膜でどのような遺伝子が発現しているかをmicro-array法で検討し、その結果をrealtime PcRにて確認する事を計画した。平成16年度は、マイクロアレイ、平成17年度はqRT-PCR解析を予定通り行い、終了することができた。 具体的には、Brown Norway RatにTTTを行った。安定してsubthreshold lesionが作成できるように、まず、レーザーパワーの閾値設定を行った。TTT部位は蛍光眼底造影、および組織学的に検討した。続いて、50眼にTTTを直径2mmで計6発(眼底全体にほぼ照射できるように)施行した。これに非照射眼(コントロール)を同数用意し、それぞれtotal RNAを抽出した。total RNAは各群ともおおよそ350から400ug程抽出した。そこからmRNAを抽出し、精製、その後cDNA合成し、ビオチンで標識する。その後、cRNAを精製・抽出し、MgOAcでfragment化する。これをAffymetrix社のGeneChip(マイクロアレイ)にhybridizationさせて、そのシグナルを解析する。これを最低2回繰り返し、解析した。また、qRT-PCRでマイクロアレイの結果を再確認した。 その結果、合計8種類の遺伝子(Asns,EPCR,Fgl,IL-1β,MCP-1,MT-2,NMDMC and TSP-1)の有意な発現がマイクロアレイおよびqRT-PCRにて確認された。これらの中に、血管新生関連遺伝子として、TSP-1,IL-1β,MCP-1が含まれており、また、凝固促進因子として、TSP-1とEPCRの発現亢進がみられた。以上の結果から、TTTにより血管新生および血液凝固が遺伝子レベルで制御されている可能性が示された。この知見については、まだ次ページの発表の項には記載できないが、現在論文を投稿中である。
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