研究概要 |
糖尿病黄斑浮腫は糖尿病の罹患期間の持続により高頻度に発症し、視力低下の大きな原因になる。治療の一つの選択として硝子体手術を行い、後部硝子体剥離を作製することでかなりの改善もしくは病勢の維持が得られるが、手術による合併症もかなりみられることから、Enzymatic Vitreolysisの導入としてRecombinant microplasminを用い、化学的に後部硝子体剥離を作製することを試みた。リコンビナントマイクロプラスミン(rmpli)は、硝子体腔内に注入するとウサギ硝子体を網膜面から剥離すること、およびその眼内での安全性について、投与後90日間観察した。高濃度では一時、網膜電図(ERG)上でa波およびb波の減弱がみとめられたが、全例で90日までの間に、正常に復位していた。(IOVS46:3295-9,2005に発表)現在rmpliの臨床治験が海外で行われているため、我が国での使用はまだできない。従って本治療の選択肢の一つとして、自己血由来のプラスミンを用いる臨床応用を、かなりの症例数行うことが出来た(53症例)。プラスミノーゲンの作製にあたって、エンドトキシンフリーのキットの作製も成功し、これを用いて作製したプラスミンを使用し、良好な結果が得られた。(EJO15:787-94,2005に発表)糖尿病黄斑浮腫では、硝子体手術時の術中使用において後部硝子体剥離(PVD)が誘発され、手術を短時間で安全に行えた。また単独硝子体内投与(手術施行無し)でもPVDが発生し、浮腫の軽減、視力向上の良好な結果が得られた。 自己血由来プラスミンとマイクロプラスミンは、同様にPVDを作製することから、今後リコンビナントマイクロプラスミンが臨床に用いられることになると、有望な治療の選択肢の一つとなるであろう。
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