研究概要 |
サル眼に実験的脈絡膜新生血管(CNV)を作製した後、従来の報告より少量(2.5mg/Kg)の両親媒性光感受性物質ATX-S10(Na)(ATX)を用いた光線力学療法(PDT)をおこない、網膜・脈絡膜への障害なしに選択的CNVの閉塞が得られるPDTの設定について検討した。 PDT後1日:ATX投与後5分でPDTをおこなった場合に網膜血管の閉塞が生じた。また投与後15,25,35分で照射エネルギー量を60J/cm^2にすると網膜血管の閉塞が生じた。投与後5から36分で照射エネルギー40から60J/cm^2でPDTをおこなった場合CNVの閉塞はなかった。この時、病理組織ではCNV内の血管に血栓形成が見られなかった。 PDT後7日:早期・後期ともにCNVからの蛍光色素の漏出は減弱しているものの過蛍光が見られ、CNVの閉塞はなかった。病理組織ではCNVの線維化が進んでいた。 投与後早期に網膜血管閉塞が起きた理由として早期ではATXの血中濃度が高く、PDTにより血管内皮細胞に障害が生じたと考えた。また、CNVを閉塞させるため照射エネルギー量を多くしても網膜血管に障害が生じた。その他の設定では網膜血管の閉塞は生じなかったもののCNVも閉塞しなかったことから、今回の2.5mg/Kgという投与量ではCNVの選択的閉塞は得られないことがわかった。今後は投与量をもう少し増やすこと、もしくは投与から照射までの時間を長くして照射エネルギー量を増やすことを考えている。 ATXを2.5mg/Kg投与してサル眼のCNVにPDTをおこなったがCNVの選択的閉塞は得られなかった。ATXの臨床応用に向けて網脈絡膜組織に影響のないPDTの照射条件のさらなる検討が必要である。
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