我々はサル眼に実験的絡膜新生血管(CNV)を作製した後、光感受性物質ATX-S10(Na)(ATX)の投与量を3.5mg/Kgに設定し光線力学療法(PDT)をおこなった。最終的な目標は網膜・脈絡膜への障害なしに選択的CNVの閉塞が得られるPDTの照射条件を得ることであった。 様々な条件でCNVにPDTを行なった結果、ATX投与からPDTまでの時間が29分以内の場合(照射エネルギー量40〜55J/cm^2)、6か所中5か所で網膜血管の障害を認めた。ATX投与からPDTまでの時間が30分の場合、50J/cm^2では選択的なCNVの閉塞を認めたが、40J/cm^2ではCNVの閉塞を認めず、60J/cm^2では網膜血管の障害を認めた。ATX投与からPDTまでの時間・照射エネルギー量が、それぞれ、30分・50J/cm^2、31分・55J/cm^2、32分・50J/cm^2、33分・60J/cm^2、の場合(4か所)に選択的なCNVの閉塞を認めた。ATX投与からPDTまでの時間が35分以降の場合(照射エネルギー量40〜80J/cm^2)、9か所すべてで、CNVの閉塞を認めなかった。選択的なCNVの閉塞を認めたものはPDT7日後の検眼鏡所見でCNVの線維化がみられ、CNV周囲の漿液性網膜剥離は認めなかった。病理組織学的検討ではCNV内に明らかな血管腔を認めず、線維芽細胞、色素含有細胞などの増殖により線維化が生じていた。脈絡膜毛細血管に明らかな閉塞所見は認められなかった。また、照射部内の網膜の既存の血管はよく保たれており、閉塞や消失は認められなかった。網膜内層もよく保たれていた。 今回の検討でCNVを選択的に閉塞できる照射条件を得ることができたが、十分な幅をもった至適照射条件を得ることができなかった。臨床応用を考えた場合、投与量を3.5mg/Kgにすると有効な治療領域が狭くなってしまう可能性が考えられた。
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