研究概要 |
糖尿病性網膜症は,成人失明の第一位をしめる、そこで糖尿病自然発症ラット(SDTラット)で網膜症発症の機序を検討した。SDTラットにデキストラン蛍光造影をおこない、糖尿病の進行にともなう網膜血管の変化を観察した。その結果、SDTラットでは高週令の個体で、ヒト増殖糖尿病網膜症に似た新生血管を伴う眼内増殖組織の形成がみられるものがあった。しかしながら、網膜新生血管の発生はまれで、眼内増殖組織の形成のあるものでもヒト糖尿病網膜症と異なり、眼底に毛細血管床の閉塞による無灌流領域が見られないことが特徴であった。SDTラット網膜におけるPEDF (pigment epithelium-derived factor)、VEGF (vascular endothelial growth factor)発現を検討した結果、血管新生阻害因子のPEDFおよび促進因子のVEGFともに発現が増強していることがわかった。ヒト糖尿病網膜症ではPEDFが低下しVEGFが上昇することが報告されている。網膜におけるPEDF発現の違いが毛細血管床の閉塞の有無に関与している可能性がある。血小板由来マイクロパーティクル(PMPs)は活性化血小板から放出され、凝固反応を促進し、血栓形成を促進するので、糖尿病合併症の進行に重要と考えられる。同意の得られた患者から採血を行い。血小板由来マイクロパーティクル(platelet-derived microparticles : PMPs)、活性化血小板(CD62p、CD63)を測定し、網膜症進展との関係を検討した。PMPsは活性化血小板(CD62p、CD63)と強い相関がみられた。さらに、PMPsは糖尿病網膜症の進行に伴い増加傾向がみられ、特に毛細血管床の閉塞を有する群で、有意に増加していた。このことから、PMPsの増加が糖尿病網膜症を進行させる因子であると考えられた。
|