研究概要 |
(1)先天小瞳孔に緑内障を合併した家系で、20数年の経過観察中に発達緑内障を起こした2症例4眼について臨床所見、遺伝的背景、線維柱帯組織を調べた。その結果、本家系内では、先天小瞳孔と隅角発育異常、発達緑内障が密接に関連して発症していた。明らかな遺伝子変異は検出されなかった。隅角線維柱帯は、線維柱帯が未熟で、大量の細胞外マトリックスが貯留していた。 (2)ステロイド緑内障患者の線維柱帯切除術時に切除された線維柱組織を、免疫組織学的に調べた。その結果,正常線維柱帯組織および原発開放隅角緑内障,発育異常緑内障の線維柱帯組織に比較して、IV型コラーゲン,ヘパラン硫酸系プロテオグリカンの細胞外マトリックスが多く分布していた。 (3)トリアムシノロンアセトニド硝子体注入後に眼圧上昇を来したステロイド緑内障眼の、緑内障手術時に得られた線維柱帯組織を光学顕微鏡、電子顕微鏡で観察した。その結果、線維柱帯に細胞外マトリックスの蓄積は観察されず、線維柱帯での細胞外マトリックスの蓄積がステロイド緑内障の発症主因ではない可能性が示唆された。 (4)血管新生緑内障眼の線維柱帯組織を抗ニューロピリン-1抗体および抗アンギオポイエチン-2抗体で染色し、血管新生緑内障の線維柱帯ではアンギオポイエチン-2が分布していて、血管新生に関与している可能性が示された。 (5)Axenfeld-Rieger症候群の家系の遺伝子を調べ、FOXC1遺伝子に変異があることが明らかになった。
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