研究概要 |
1.ブタの交配計画と検体の蓄積一鎖肛ブタ家系の維持 成獣として5頭維持している。新たに他家系の散発性の新生仔鎖肛雄豚を2頭入手し、生直後に根治手術を施行、肛門ブジーをしつつ飼育している。 2.遺伝子解析 鎖肛発症において複数の遺伝子が関与していることは、我々の作成樹立した筑波鎖肛ブタを用いた交配結果より予測されている。独自に樹立した遺伝性を有する自然発症の鎖肛ブタの遺伝子解析にむけて、離れた系であるメイシャンブタ(梅山ブタ)を導入して純系に近い鎖肛ブタとの人工授精に成功し、これより得られたFlを鎖肛ブタに戻し交配したところ、F2において8%(42/523)の頻度で鎖肛ブタが発症した。この家系においてF0,F1,F2のサンプルは現在も十分な量が凍結保存してあり連鎖解析はすべてこれらのサンプルを用いた。 今回は連鎖解析のマーカーを増やしてさらに詳細な検討を加え多因子遺伝とされる中で4つ染色体において異常領域を推定するところまで到達した。これまでの結果はNCBI(National Center for Biotechnology information)により提供されているOMIA(Online Mendelian Inheritance in Animals)に掲載された(OMIA ID:000083)。今回は最も有力視されているブタ15番染色体上のGli2遺伝子に的を絞った。これまで全く不明であったブタにおけるGli2遺伝子についてSomatic Cell Hybrid Panelによる検討でブタの遺伝子はChr15q1.2-q1.4上にあることを確認した。またGli2のEXON 8の構造と染色体上の部位を決定することができた。現在はイントロンを含めたGli2遺伝子全領域について鎖肛を発症したものと、しないものにおける違いを詳細に検討している。この結果により鎖肛遺伝子(異常部位)が特定できれば、cloacal plateの発生との関係を遺伝子レベルで明らかにすることができ、直腸肛門の発生学的な機序の解明やさらにはヒトにおいても予防や治療にも役立つと思われる。また先天性外科疾患の多因子遺伝解析モデルとしてのみではなく他疾患の解析法を探索する上でも役立つと思われる。
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