研究概要 |
ReovirusはRas遺伝子が活性化した細胞の中ではウイルスの増殖が促され、その結果、ウイルスは宿主細胞を融解する。膵癌細胞などで腫瘍融解作用が報告されている。一方、Sindbis virusは、幼弱なマウスの脳に感染し、アポトーシスを引き起こすことが知られている。癌細胞に対する腫瘍融解作用に関する実験結果はほとんど報告されておらず、神経芽腫に対する有効性が期待される。 ReovirusはL cellに感染させ、増殖、回収を繰り返し、高力価のウイルス液を作成した。Sindbis virusも同様に、Chicken Embryo Fibroblast cellに感染させて力価の高いウイルス液を回収した。予備実験として膵癌細胞PANC 1,SUIT 2と、マウスFibroblast cell C3H10T1/2に対する効果を、10^4個の細胞に対し、moi(multiplicity of infection)を1,0.1,0.01の3段階に希釈して感染させた。Negative controlとして、ウイルス液を30分間、紫外線照射し、ウイルスの増殖能を消失させたものを用いた。Reovirusは、Day 5から膵癌細胞PANC 1,SUIT 2において腫瘍融解現象が観察されたが、10T1/2においては形態・増殖ともに変化は認められなかった。Sindbis virusは、Day3からすべての細胞において細胞融解作用が認められた。紫外線照射のウイルスでは何ら変化は認められなかった。 本治療法は、人体に病原性を持たないウイルスが体内で増殖するため、ウイルスが増殖しない従来の遺伝子治療と比べ、その効果も高いと推測されることが特徴である。今後は、神経芽腫を対象に腫瘍融解効果を解析する予定である。
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