研究概要 |
【背景と目的】腫瘍融解ウイルス療法とは、腫瘍内でウイルス複製能力を保持しつつ、正常細胞では病原性を示さないウイルスを用いて腫瘍を融解するというものである。今年度、我々はSindbis virusを用い、神経芽腫細胞株に対するin vitroの腫瘍融解効果を検討したので報告する。【細胞株と方法】神経芽腫細胞株SK-N-SH,IMR32,LA-N-5,GOTO,RT-BM-1を用いた。Sindbis virusは、MOI(Multiplicity of Infection)=0.0001から1までの間で感染実験を行った。陰性コントロールとしてウイルス液を45分間、紫外線照射しウイルスの複製能を消失させたものを用いた。アポトーシス誘導の判定にはTUNEL法を用いた。【結果】Sindbis virusを5種類の神経芽腫細胞株に感染させると、いずれの細胞もMOI=0.01以上でday3には、ほぼ100%の細胞が丸くなって浮遊した。同量の紫外線照射したウイルスを感染させても細胞に変化は認められなかったが、MOI=1以上まで紫外線照射ウイルスを増やすと細胞は丸くなり浮遊した。TUNEL染色を行なうと、感染早期にアポトーシスが誘導されていることが明らかになった。また、ウイルス感染後の細胞培養液を回収し、ウイルス力価を測定したところ、100倍に上昇していた。【考案】Sindbis virusは神経芽腫に対しては極めて強い腫瘍融解効果を示した。ウイルスの感染に際してアポトーシスが誘導されることが示された。
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