研究概要 |
「背景と目的」小腸移植は拒絶反応が高頻度に起こり、かつ重症化するためその臨床成績は良好とは言えず、新たな免疫抑制療法が望まれる。一方、リンパ球が血管系とリンパ組織の間を循環する際に、ホーミングに関連する重要な因子がMAdCAM-1である。今回、移植により活性化されたリンパ球のホーミングを阻止する抗MAdCAM-1抗体によるグラフト保護、延長効果をラット小腸移植モデルにて検討した。「方法」DA(RT-1^a或いはLEW(RT-1^1)ラットをドナーに、30cmの小腸をレシピエントLEW(RT-1^1に異所性に移した。移植時にグラフト血管内に抗MAdCAM-1抗体を投与したLEW to LEW(A群)、DA to LEW抗体投与なし(B群)、DA to LEW抗体投与あり(C群)に分けた。グラフト生存期間、6日目の免疫組織所見、採血結果を比較した。「結果」C群ではB群に比し有意にグラフト生存の延長を認めた(p<0.05)。また、6日目のグラフトの病理組織ではB群に比し、C群で絨毛の高さ、粘膜下の厚さ等の腸管の組織構造が保たれていた。蛍光免疫組織染色ではC群でB群に比し、MAdCAM-1の発現が抑えられていた。またフローサイトメトリー、蛍光輝度ヒストグラム分析では、MLN,PPで有意差はなかったものの、グラフト組織でのCD4+ T cell,CD8+ T cellの発現がB群に比して低下していた。Mixed lymphocyte reaction法、及び活性化ケモカインをフローサイトメトリーで測定したところ、C群でもリンパ球の反応性は良好に維持されていた。「結論」ラット小腸移モデルにおいて、抗MAdCAM-1抗体投与によるグラフト延長効果が示唆された。抗MAdCAM-1抗体の投与は、小腸移植における新たな免疫抑制療法の一つとして有用であると思われた。
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