研究概要 |
坐骨神経損傷後において損傷神経内のシュワン細胞ではslit familyは有意にその発現が上昇する。Slit familyにはslit1,2,3のhomologueが存在し、growth coneに対し反発因子として作用する。そこでslit familyの末梢神経再生における機能及び役割を調べるため、顔面神経損傷モデルを用いて顔面神経核におけるslit familyの発現の変化を調べた。 8週齢雄のラットの左側顔面神経を茎乳突孔より末梢側で切断し、右側は顔面神経の露出のみを行った。In situ hybridization法を用いて術後1,3,5,7,14,28日における顔面神経核でのslit1,2,3のmRNAの発現を調べた。結果、slit1は術後5,7,14,28日目に健側に比べ患側において有意に発現が上昇していた。それに対し、slit2は術後1,3,5,7日目に健側に比べ患側において有意に発現が減少していた。slit3は術後全ての日数において健側と患測で発現に優位な差はなかった。次にcounterstainを行い、slit familyの発現している細胞を調べた。Slit1は顔面神経核内のグリア細胞において発現していた。slit2とslit3は顔面神経neuronにおいて発現していた。 今回slit1は損傷部位から離れた顔面神経核内のグリア細胞で発現上昇しており、growth coneだけでなく神経細胞体にも何らかの影響を及ぼしていると考えられた。slit2は顔面神経neuronでの発現が減少しているが、損傷部におけるシュワン細胞での発現は上昇している。このことは顔面神経neuronでの自己分泌の変化がgrowth coneでのslit2に相互作用している可能性を示している。Slit familyは末梢神経再生時にgrowth cone以外でも影響していると考えられた。
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