【目的】マウス大動脈片をコラーゲンゲル内に包埋培養し、培養下で毛細血管を新生させた後、マイクロダイセクション(LMD)用レーザーを応用し、新生した毛細血管を顕微鏡下で切断した。切断部位における内皮細胞とマクロファージの動態、血管新生因子の調節にかかわる転写因子であるearly growth response gene-1(Egr-1)の発現について検討した。 【材料と方法】成熟マウスより採取した動脈片を培養皿(petriPERM50)に置き、その上にコラーゲンゲル液を重層しゲル化した後、培養液を加え培養を行った。培養10日後、PALMレーザーマイクロダイセクション(窒素レーザー;パルス方式、337nm)を用いて新生毛細血管様チューブならびに周囲の遊走細胞を顕微鏡下で切断後、位相差顕微鏡と電子顕微鏡による観察を行った。また、DiI-Ac-LDLで標識した後、蛍光顕微鏡を用いて経時的に観察した。さらに、切断前後の毛細血管様チューブおよび遊走細胞からtotal RNAを抽出し、cDNAに変換後、RT-PCRにより転写因子、Egr-1の遺伝子発現を検討した。 【得られた成果】動脈片から新生した毛細血管様チューブの切断後、その周囲にマクロファージの集積が認められた。Egr-1の発現は切断後30分で増強し、その後減少した。Egr-1は血管傷害時に一過性に発現が認められ、細胞遊走、増殖、血栓形成などに重要な役割を担い、血管の傷害によって発現が誘導される遺伝子群の共通の調節因子であると考えられている。今回の実験結果から、本モデルは血管傷害後の細胞動態だけでなく、創傷治癒の分子機構を解析する為の有用なモデルになり得ることが分かった。
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