(1)無細胞真皮マトリックスの作製:a 培養担体に適した基底膜を温存した同種無細胞真皮マトリックスの作成:杏林大学スキンバンクに寄贈された死体皮膚の処理過程での余剰皮膚(同種皮膚)を洗浄後、PBS溶液中で-20℃まで急速に凍結し、凍結後37℃まで緩徐に融解した。この同種皮膚をさらに1mol NaCl溶液内で12時間インキュベートして表皮層を剥離した。こうして得た真皮層をさらにEDTA-PBS溶液中で数日間振盪洗浄し、基底膜を温存した無細胞真皮マトリックスを作成した。b 結合組織(代用硬膜および代用腱)の鋳型に適した同種無細胞真皮マトリックスの作製:硬膜や腱の鋳型となる無細胞真皮マトリックスとして、トリプシンにて基底膜を除去した無細胞真皮マトリックスを作成した。このマトリックスをラットのアキレス腱欠損部に移植したところ、4週間後に腱用組織が再生された。すなわち無細胞真皮マトリックスを、Tissue Engineered Connective Tissueの担体あるいは鋳型として使用しうることが示された。c 同種無細胞真皮マトリックスの滅菌処理:グリセロール処理により真皮マトリックスの滅菌度を向上させ、処理後の無細胞真皮マトリックスの移植特性をラットモデルで評価した。その結果グリセロール処理による真皮マトリックスの移植特性の変化はみられなかった。(2)同種無細胞真皮マトリックスを担体としたTissue Engineered Epithelium(複合型培養皮膚、複合型培養口腔粘膜)の作製と性状の検討:手術時に得られた皮膚、口腔粘膜の余剰組織から、酵素処理により上皮細胞と線維芽細胞を分離培養し、無細胞真皮マトリックス担体に組み込むことで、複合型培養上皮を作製した。また熱傷患者自身の細胞を組み込んだ自家複合型培養上皮を臨床応用(移植)し、良好な生着を認めた。これらの研究は、杏林大学倫理委員会の承認のもと、ヘルシンキ宣言、日本組織移植学会によるヒト組織を利用する医療行為に関するガイドライン等に則って行った。
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