骨延長器を用いた骨延長法(distraction osteogenesis)は、近年頭蓋縫合早期癒合症(craniosynostosis)などの頭蓋骨形態異常の治療に用いられるようになった。現在臨床で行っている骨延長法ではチタン製の延長器を用いており、延長終了時に延長器を抜去する手術が必要であり患者の負担が大きい。そこでわれわれは抜去手術が不要な生体吸収性の材料で延長器を試作した。現在家兎頭蓋骨を用いた実験を行っている。 16年度は、生体吸収性のポリ乳酸を材料とする延長器を試作して予備実験を行なったが、17年度はその結果をふまえ、器具の厚みを増した改良型を作成し、現在埋め込み延長実験を行っているところである。頭蓋骨の延長が問題なく行なえることを示すことができ、臨床応用に向けての第一歩を踏み出すことができたと考えた。 今年度はさらに長期モデルを作成し、エックス線ではロッド抜去後の骨延長部の後戻りも認めないことを確認した。病理組織像では、延長部に形成された骨組織は本来の頭蓋骨と同様の板間層構造とはいえないが骨形成がみられ、一部に仮骨も認められた。骨延長器自体は多数の微細な亀裂が生じており、間隙には結合組織の増生と炎症細胞の浸潤が観察された。吸収性骨延長器を使用した家兎頭蓋骨の長期モデルにおいて、延長部には骨組織が形成され良好な延長効果がえられ、有用であると思われた。
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