手術時に切除されたケロイド・肥厚性瘢痕をVEGF抗体、PCNA抗体で免疫染色し、染色された血管および血管内皮細胞を観察して組織内部での循環状態について考察した。デジタル光学顕微鏡を用いて免疫染色された血管を観察し、画像解析ソフト(Act2U)を用いて、血管内皮細胞のうちVEGF陽性細胞を同定し、陰性のものとの比率を求める。血管内皮細胞のうちPCNA抗体陽性細胞をカウントし、陰性のものとの比率を求める。それぞれのデータをケロイド、肥厚性瘢痕、成熟瘢痕に分類して、比較する。 結果 ケロイドでは狭小化し、押しつぶされたように観察される血管が観察され、血管内皮全体がVEGF抗体で染色されており、陰性のものと比較することができなかった。さらに狭小化された血管のなかに重なり合った核が染色され、PCNA陰性核と比較することが不可能であった。肥厚性瘢痕でも同様の結果が得られた。 成熟瘢痕では、VEGF抗体で染色された血管内皮膚細胞およびPCNA陽性の血管内皮細胞核は観察されなかった。 考察 今回の結果では、ケロイドや肥厚性瘢痕内部ではVEGF抗体陽性の内皮細胞やPCNA抗体陽性の分裂中の内皮細胞が観察され、虚血が刺激となり、内皮細胞が増殖していると考察されるが、その周りを膠原線維が取り囲んでおり、血管の拡張を阻んでいる様子が観察された。成熟瘢痕では虚血が改善されており、内皮細胞の分裂は生じていないと考えられる。
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