1.脳虚血再灌流障害におけるUCP-2(uncoupling protein 2)の関与の検討 脳虚血再灌流障害においては障害程度が強くなるに従い、UCP-2の発現が増強してくることが判明した。UCP-2温熱ストレスで発現可能が検討した結果、熱ショック蛋白質と同様に誘導可能であることが判明した。UCP-2のアンチセンスを作成し、あらかじめUCP-2の発現抑制を実施したラットで脳虚血再灌流障害をもたらすと障害が悪化することが判明した。今後、UCP-2の脳保護作用、誘導方法について検討を加えているが技術的問題がありさらなる検討が必要である。 UCP-2はミトコンドリアのエネルギーレベルの調節に関与し、UCP-2の事前発現によりミトコンドリアのエネルギー調節を変化させることで壊死、アポトーシスへの進行を防止できた。逆にUCP-2の作用を抑制すると障害が増強された。このためUCP-2は脳保護に必須の蛋白質であると考えられる。またHMGB1が高発現した脳では組織障害が強く発現し、HMGB1の脳での組織損傷機構の存在が示唆された。温熱によるUCP-2誘導例ではHMGB1の発現が抑制され組織損傷が軽度であった。このことからUCP-2の脳保護作用には脳障害因子であるHMGB1の遊離産生抑制が関与している可能性が示唆された。 2.エチルピルビン酸の脳保護効果について ラットを用いて、脱血により血圧を低下させ、さらに両側総頚動脈を血管針子にてクランプすることで前脳虚血モデルを作成した。このモデルで再灌流時にラクテートリングル液輸液群とエチルピルビン酸輸液群を比較するとエチルピルビン酸輸液群において有意な生存率の改善が得られた。また障害脳の組織所見においても虚血にともなう障害の軽減効果がエチルピルビン酸群で軽度であることが確認された。またPC12培養細胞にてエチルピルビン酸の効果をみるとアポトーシスの抑制効果が判明した。エチルピルビン酸投与ラット脳ではHMGB1の産生が抑制され、障害分子であるHMGB1の遊離、産生を抑制することで脳保護作用が発揮される可能性が示唆された。
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