研究概要 |
本研究の目的は、骨芽細胞系細胞の細胞骨格・細胞接着装置の基本構造を調べ、さらに、それらの機械的刺激受容機構における役割について生体内に近い細胞環境下で検討することである。そのため、マウス頭頂骨の器官培養系で、矢状縫合部に張力刺激を加える系を用いて、骨芽細胞の細胞骨格・細胞接着装置の基本構造、ならびに機械的刺激による早期変化について、組織化学的ならびに微細構造学的に検索した。さらに機械的刺激による構造変化についても検討を加えた。 生後3-4日齢マウス頭頂骨矢状縫合部において、成熟骨芽細胞ではアクチンが細胞皮質に集積しており、細胞の輪郭が明瞭に観察された。骨芽細胞の前駆細胞ではその傾向が弱まり、その代わりにアクチンはストレスファイバー様の線維構造として細胞内に分布する傾向が強まることが明らかになった。また、骨膜中の線維芽細胞では細胞皮質のアクチンは少なく、骨芽細胞の前駆細胞よりもより明瞭で太いストレスファイバー様の線維構造に富んでいた。矢状縫合部に約0.2gの張力刺激をバネ装置によって加えた状態で3時間あるいは6時間培養すると、すべての細胞は伸展方向に引き伸ばされ、変形していた。それに伴い、アクチン細胞骨格も変形した。6時間では成熟骨芽細胞、前駆細胞の細胞皮質におけるアクチンの集積は増加し、線維芽細胞のストレスファイバーは太さを増したが、3時間では、アクチン細胞骨格の形態が変形しただけで明らかな増加はまだ認められなかった。細胞間接着因子であるカドヘリンについては、0,0.5,3,6時間群、いずれにおいても、細胞同士が密接する骨芽細胞において、細胞膜に沿って強い免疫反応が検出された。一方、βカテニン、ビンキュリンは伸展刺激開始30分以後で、骨芽細胞に明瞭に検出されるようになった。
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