骨は、造血、免疫、血中カルシウム濃度を維持しながら、力学的負荷に耐えるという重要な機能を持つ。本研究は、骨の疾患によって変形した骨内部の力学状態と異常な細胞の働きをコンピュータで再現し、患部を適切に治療する戦略を計算によって求める方法を探ることを目的として、平成16年度〜17年度の2年間にわたり、研究をおこなった。本研究の成果として、ヒト2次元大腿骨近位モデルおよび、3次元下顎骨モデルを解析するための基本的な環境を構築した。実際の骨疾患の解析としては、下顎骨骨髄炎の患者データを使用して、治療シミュレーションをおこなった。また、より詳細に骨の力学感受性を検討するために、岡山大学と共同で、骨の力学センサーである骨細胞の形態学的解析を行い、骨細胞の形態をもとに力学シミュレーションを行った。さらに、完成した骨だけではなく、骨の原型となる軟骨の形態形成に関わる過程の解析についても、成果を上げる事ができた。今後、これらの研究成果を利用して、骨の変形をともなう様々な疾患の治療に応用が可能なシミュレーション環境の構築をおこないたい。さらに、シミュレーションを通して見いだされた様々な課題について、計算機だけでなく、組織・細胞の形態や働きを解析する事を通して、解決をはかっていきたい。
|