研究概要 |
本年度は,ミュータンスレンサ球菌より産生される不溶性グルカンによる免疫機能の誘導の可能性について検討するにあたり,各種ミュータンスレンサ球菌にスクロースを加えてグルカンを精製,凍結乾燥させ,以下の実験を行なった. 1.不溶性グルカンのヒトおよびマウスリンパ球への増殖活性誘導の有無 ヒト末梢血単核球およびマウス脾臓リンパ球にStreptococcus sobrinus由来のグルカンを添加させた時の細胞の増殖活性は,ほとんどみられなかった. 2.不溶性グルカン添加によるヒトおよびマクロファージの活性化誘導の有無 S.sobrinus由来の不溶性グルカンを0.1M NaOHにて溶解した溶液ないし,不溶性グルカンの懸濁液を1μg/ml以上添加させることにより,ヒト末梢血マクロファージおよびマウス腹腔マクロファージの遊走能およびIL-1,IL-8(MIP-2),TNF-αなどのサイトカイン産生が認められた.また,少量ながら活性酸素の産生も認められた. 3.不溶性グルカン添加による好中球の活性化の有無 S.sobrinus不溶性グルカンを10μg/ml以上の濃度でヒト好中球の遊走能の増強と活性酸素の産生が認められた.さらにマクロファージを不溶性グルカンに一日刺激した後の培養上清に好中球が反応し,遊走能の増強と活性酸素の産生が認められた. 以上の結果より,ミュータンスレンサ球菌より産生される不溶性グルカンは,ヒトおよびマウスのマクロファージおよび好中球を活性化させ,炎症性サイトカインや活性酸素産生と遊走能を誘導することを明らかにした.このことは,不溶性グルカン付着部位でのマクロファージ,好中球の凝集とそれに伴う歯肉上皮細胞の傷害の誘導の可能性を示唆するものであり,次年度においてその可能性の可否を検討する.
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