研究課題
基盤研究(C)
歯周病発症には歯周組織の免疫応答が深く関与する。我々は、歯周病原鎌気性グラム陰性菌が大量に産生する酪酸がT細胞apoptosisを誘導し、歯周局所免疫応答に影響を及ぼすことを報告した。また、T細胞及び線維芽細胞(FB)の共存培養により、酪酸添加後FB接着T細胞数が増加し、接着T細胞がapoptosisを回避する現象を認めた。FBによる回避機構における酪酸の作用、細胞外matrix、接着分子発現に及ぼす影響、上皮細胞の関与を検討した。ヒトJurkat T細胞株、歯肉FB Gin-1細胞株を用い、各種濃度の酪酸存在下における細胞接着分子の遺伝子転写量をRT-PCR法で検討した。同時に、酪酸のFB-matrixの発現に及ぼす影響を検討した。上皮細胞の関与はKB細胞を用いた。T細胞とFB間の接着は、抗CD44、抗VLA-2、抗VLA-5の各抗体に阻害された。酪酸存在下におけるT細胞のCD44、VLA-2、VLA-5遣伝子転写量への酪酸濃度、及び経時的変化を検討した。VLA-2、VLA-5遺伝子の転写量に顕著な変化は認められなかったが、CD44遺伝子の転写量は、添加12時間から24時間で著しく増加した。一方、FBのビアルロン酸合成酵素、fibronectin、collagen遺伝子の転写量に変化は認められなかった。以上の結果から、酪酸存在下のFBへの接着T細胞数の増加及びapoptosis回避機構には、CD44発現量が関与しているものと思われる。ヒト口腔分離株を用いた場合では、健康歯肉から分離したFBでは酪酸刺激によりIL-6の産生が上昇しapoptosis回避に関与する可能性が示された。一方、歯周病患者から分離FBは酪酸感受性で、apoptosisが誘導されるためT細胞apoptosis回避は誘導されなかった。この感受性の違いが歯周病発症に闘与する可能性が示唆される。
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Oral Microbiology, 1^<st> Edition (Edited by Umemoto, T., Ogawa, T, Ochiai, K., et al.)
ページ: 70-88
ページ: 224-278