破骨細胞は単球マクロファージ由来で骨吸収能を有する多核細胞である。破骨細胞形成にはM-CSFとRANKLが必須で、RANKL/RANKシグナルによって活性化されるc-Fos、Mitf、PU.1、NFATc1などの転写因子が重要な役割を演じていることが報告されている。しかし、破骨細胞形成における核蛋白質の質的量的変化を詳細に解析した報告は少ない。最近、私共は妊娠14日目マウス頭蓋冠骨細胞中のMac-1^+c-Fms^+RANK^+細胞から破骨細胞前駆細胞株4B12細胞を樹立した。そこで、この細胞を用い破骨細胞分化を特異的に制御するリン酸化蛋白質を解明するために、M-CSFとsRANKL刺激後TRAP陽性多核細胞が形成される6日目の核内蛋白質とM-CSF単独刺激6日目の核内蛋白質とを二次元電気泳動で展開後、Pro-Q Diamondでリン酸化蛋白質を染色し、さらにSYPRO Rubyで総蛋白質を染色した。その染色画像のディファレンシャルデスプレー解析により増減のあった蛋白質を検討した。M-CSF単独刺激6日目の核内蛋白質は、SYPRO Ruby染色で327スポット検出された。一方M-CSFとsRANKL刺激6日目の核内蛋白質では、220スポット検出された。両者のSYPRO Ruby染色における核内蛋白質のディファレンシャルデスプレー解析結果、M-CSFとsRANKL刺激では新たに101スポットが出現、208スポットが消失、32スポットが増加、37スポットが減少していた。新たに出現してきたスポットの中で増加量の大きかったスポットは、分子量約50kDaでpI5.5前後に1スポット、分子量約50kDaでpI6〜7に8スポット、分子量約60kDaでpl5.5-6.5に2スポット観察された。これらのスポットは、Pro-Q Diamondでも染色されたことからリン酸化蛋白質であることが示唆された。また、p38 MAP kinase抑制剤SB202190(10μM)添加により、これらのスポットは減少または消失した。これらの結果から、上記の11スポットは破骨細胞分化になんらか関与している核内蛋白質であることが示唆された。これらの蛋白質を同定中である。TRAP陽性多核細胞が多数形成されてきた6日目の核内蛋白質中にc-FosやNFATc1のスポットとは異なる位置に新しいスポットが観察されたことから、c-FosやNFATc1以外に破骨細胞分化に関与する核内蛋白質が存在している可能性が示唆された。これらの新しい蛋白質の同定は破骨細胞形成に関与する新規の因子を発見することにつながり、破骨細胞特異的な分化を制御する機構を見出す新しい手掛りを与えてくれるものと考える。
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