歯周病では、感染に対する免疫反応の結果として産生される因子によって、破骨細胞の形成が促進され、その結果、骨吸収・歯槽骨が喪失するということが明らかにされつつある。そのため、歯周病治療によって歯の保存をはかるためには、感染因子の除去と共に、感染免疫能を抑制することなく骨吸収を抑制することが重要であると考えられる。 本研究では、免疫促進作用を持つlimitnに着目した。Limitinは、B系細胞の増殖抑制因子としてクローニングされた因子である。近年、破骨細胞前駆細胞とB系細胞が非常に近い関係にあり、B系細胞増殖抑制が、破骨細胞前駆細胞増殖抑制につながる可能性があることが報告された。このことは、B系細胞増殖抑制効果を持つlimitnが、破骨細胞形成を抑制する可能性を示唆している。さらに、免疫促進作用を持つlimitnが破骨細胞形成を抑制することが可能であるならば、歯周病治療における骨吸収抑制薬として用いることの可能性も考えられる。そこで本年度では、歯周病における骨吸収抑制薬としてのlimitinの可能性の検討を行った。その結果、(1)RANKL、TNFαによってin vitroで誘導される破骨細胞形成を、limitinは強力に抑制する、(2)CD3抗体で活性化したT細胞による炎症性サイトカイン産生を、limitinは促進する傾向を示す、(3)活性化していないT細胞による炎症性サイトカイン産生を、limitinは促進しない、(4)Limitinは破骨細胞前駆細胞における、RANKL誘導性NFATcl mRNA産生を強力に抑制する、(5)Limitinは破骨細胞前駆細胞における、c-Fos含有量を減少させること、などが明らかになった。これらの結果は、limitinが、免疫反応を抑制することなく、破骨細胞形成を抑制することを示唆するものである。
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