Limitinの破骨細胞形成抑制機構について実験を行った。Limitinは、type-I interferon様因子でありIFNα/βレセプターに結合することが報告されている。破骨細胞前駆細胞上のIFNα/βレセプターにIFNβが作用すると、蛋白質合成阻害効果を持つPKR mRNAの発現を介し破骨細胞形成に必須の因子であるc-fosのmRNAからの翻訳が阻害され、破骨細胞の形成が抑制される。そこでlimitinにおいてもPKRが関与しているのか否かについて種々の検討を行った。Limitinを破骨細胞前駆細胞に作用させると、IFNβの場合と同様PKR mRNA発現が有意に増加した。LimitinによるPKR mRNA発現とc-fos蛋白質翻訳阻害との関係を調べるため、siRNAを用いた実験を行った。PKRに対するsiRNAを破骨細胞前駆細胞に導入すると、limitinによるPKR mRNAの発現は80-90%抑制された。一方、コントロールとして用いたscrambled siRNAの導入ではPKR mRNA発現は影響を受けなかった。c-fos mRNA発現はどちらのsiRNAの導入によっても影響を受けなかったが、limitinにより減少したc-fos蛋白質の発現はPKR-siRNAによって回復した。また、limitinによる破骨細胞形成の抑制は、PKR-siRNAによって一部回復した。以上の結果から、limitinによる破骨細胞形成抑制効果の一部は、PKR mRNA発現を介したc-fos蛋白質の翻訳阻害によりc-fos蛋白質量が減少した結果であることが考えられた。
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