歯周病では、感染に対する免疫反応の結果として産生される因子によって、破骨細胞の形成が促進され、その結果、骨吸収・歯槽骨が喪失することが明らかにされている。歯周病治療によって歯の保存をはかるためには、感染因子の除去と共に、感染免疫能を抑制することなく骨吸収を抑制することが重要である。本研究では、免疫促進作用を持つlimitnに着目した。Limitinは、B系細胞の増殖抑制因子としてクローニングされた因子である。近年、破骨細胞前駆細胞とB系細胞が非常に近い関係にあり、B系細胞増殖抑制が、破骨細胞前駆細胞増殖抑制につながる可能性があることが報告された。このことは、B系細胞増殖抑制効果を持つlimitnが、破骨細胞形成を抑制する可能性を示唆している。さらに、免疫促進作用を持つlinitnが破骨細胞形成を抑制することが可能であるならば、歯周病治療における骨吸収抑制薬として用いることの可能性も考えられる。前年度までの研究研究成果の1つとして、limitinは破骨細胞形成に必須の因子であるc-fosの蛋白質合成阻害によって破骨細胞形成を抑制することを明らかにした。本年度は、そのc-fos蛋白質合成阻害のメカニズムを明にすることを試みた。その結果、linitinは、ウイルス感染時等において蛋白質翻訳阻害をもたらすPKR遺伝子の発現を促進することを明らかにした。Limitinの持つPKR遺伝子発現促進、c-fos合成阻害及び破骨細胞形成抑制効果との関係を検討するため、siRNAを用いたPKR mRNA阻害実験を行った。その結果、linitinは、PKR mRNAの発現を介しc-fos蛋白質を抑制、その結果、破骨細胞形成が抑制されることが明らかとなった。
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