研究概要 |
自然界の細菌の多くはバイオフィルムを形成しておりその病原性を明らかにするにはバイオフィルムの形成機構の解析が必須となる。Porphyromonas gingivalis, Treponema denticolaおよびTannerella fosythensisは、慢性歯周炎局所でバイオフィルムを形成しその病原性に重要な役割を果たしている。本研究では3菌種間の共凝集のバイオフィルム形成への関与と病原性に与える影響の解析を試みた。 方法:P.gingivalis ATCC33277株とT.denticola ATCC35405株とT.forsythesis ATCC43037の共凝集は、共凝集による菌体の沈殿を反応液の上清の吸光度(OD_<660>)の変化を測定することにより測定した。菌体表層タンパクが共凝集に与える影響を明らかにするため、P.gingivalis表層のタンパク分解酵素(Arg-gingiapinA,B, Lys-ginigpain)の欠損株およびT.denticolaの表層プロテアーゼdentilisinおよびmajor outer sheath proteinの欠損株を作成した。共凝集因子の分子量の解析は、超音波破砕抗原をSDS-PAGEによって泳動後,PVDF膜に転写し、それにpartner strainの超音波破砕抗原を反応させ、抗体により検出を行った。 結果及び考察:P.gignivalisとT.denticolaの共凝集はarginineやliepeptine、TLCKにより阻害された。3種のgingipain欠損株では共凝集活性が失われていた。T.denticolaの超音波破砕抗原はP.ginigvalisの62,50,44,40,38kDaのバンドに反応していた。T.denticolaとT.forsythensisの共凝集は、dentilisinの欠損によりその活性が失われていた。Immunoblotの結果からT.forsythensisのタンパクは、T.denticolaの野生株の66,46kDaのタンパクに反応し、dentilisin欠損株では46,30kDaのタンパクに反応していることを明らかにした。 本研究によりこれらの細菌間の共凝集に、菌体表層のタンパク分解酵素が関与していることを示すことができた。今後これらの酵素が共凝集でどのような役割を果たしているか、さらに共凝集によるバイオフィルムの形成によって菌の病原性がどのように変化してくるのかについて検討を加える予定である。
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