研究概要 |
1.TNFαを介したDeath ligand/receptor系解析においては酪酸によりc-FLIPの転写活性が抑制され、その結果c-FLIPタンパク質量が減少してCaspase-8を活性化し、T細胞にアポトーシスを誘導するメカニズムが示唆された。TRAILやFasLは酪酸添加で変動が認められないころから、酪酸添加によるTNFαやTNFβの増加がTNFRの発現増加を促し、アポトーシス抑制に働くFLIPの減少と相伴ってCaspase-8の活性化へと進むものと考えられる。 2.酪酸誘導アポトーシスにおいては、(1)ミトコンドリア膜電位の増加に伴うCytochrome cやApaf1,Smac等の発現増強や(2)ミトコンドリア膜に作用部位を持つBcl-2ファミリータンパクの発現変動がミトコンドリアを介したアポトーシス実行シグナルの主要部分と考えられてきたが、今回行った種々のCaspase活性並びに阻害剤に対する影響から酪酸誘導アポトーシスにおいてはミトコンドリアの下流で働くCaspase3やCaspase9よりもCaspase8やCaspase10及び12が深く関わっていることが示唆された。Caspase8やCaspase1Oの関与は、上記のTNFαを介したDeath ligand/receptor系が酪酸により誘導されることを、一方Caspase12の関与は酪酸が細胞内小胞体を介するアポトーシスに新たに関与していることを強く示唆している。またミトコンドリアに関連して働くCaspase3やCaspase9以外のオルガネラにおいてもROSが影響を与えているものと考えられる。更に酪酸によるp38の増加が抗酸化剤により著しく抑制される知見は、チオレドキシン-ASK1複合体が加齢マウスにおいてROS介在性p38MAPK経路を制御していることを確証するものである。
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